読書通信2013年4月号

『ヤバい経済学』はとても面白くてためにもなりしたがってよく売れたが、経営学でも同じ出版社から「柳の下」を狙ったタイトルの本が出た。フリーク・ヴァーミューレン『ヤバい経営学』(東洋経済新報社、1680円)がそれだ。著者はもちろん違うし手法も全然別ものだが、面白いという点では遜色がない。著者はロンドン・ビジネススクールの准教授で最優秀教師賞と最優秀授業賞を受賞した俊英である。
で内容だが、経営にかかわるさまざまなテーマが多彩に登場し、常識と思っている事柄が次々にひっくり返される。M&Aのほとんどは失敗に終わる、企業が成功するのはイノベーションのせいではない、リストラを人減らしによって行うというのは間違いだ、当節のビジネス環境の変化は昔より急速というのは本当か、などと続くのだが、みな豊富なエピソードや事例によって説明されるのですいすいと読み進んでしまう。軽い文体なのだが、論証に利用されているのは実証研究に基づくハイレベルの学術論文なので説得度は高い。ちなみに原題はBusiness Exposedで、副題を訳すと「ビジネスの世界で実際に起きているありのままの真実」である。著者の名だがオタクのFreakかと思ったらFreekだった(ちょっと残念)。

②ジャーナリストというのは因果な商売だ。取材先と親しくなければ情報がとれない。親しくなりすぎると不都合なことは書きにくいし、しばしばリーク(意図的な情報漏洩)によって利用される。取材先との距離感覚が非常に難しいわけである。
田村秀男『日経新聞の真実』(光文社新書、777円)は経済記者のそうしたエピソードを取り上げる中で、アメリカの対日戦略に日本のメディアが利用され、あるいは財務省や日銀の思惑どおりに新聞記事が作られている実態を暴き出す。著者は元日経の敏腕記者で、今は産経で優れた記事を執筆していて啓発されることが多いのだが、自らの反省の上に立ち主として日経の経済記事を徹底批判している。財務省・日銀べったりの記事を読まされ続けてきた官僚・経営者・ビジネスマンが自分でもう少し考えていれば、日本経済は違った経路をたどっていたかもしれない。メディアを批判的に読み視聴することの大切さを痛感させられる。
③東日本大震災で救援活動に挺身した自衛隊の姿はあまり知られていない。杉山隆男『兵士は起つ』(新潮社、1680円)は丹念に自衛隊員を取材して成った第一級のノンフィクションである。副題に「自衛隊史上最大の作戦」とあるが、自衛隊員にとってもこれほど肉体と精神を極限まで酷使した厳しい作戦は空前だろう。原隊に戻る途中、津波の濁流に飲み込まれて図らずも住民たちを救出する羽目になった「作戦」ならざる隊員、「作戦」出動し冷たい水の中を悪戦苦闘する隊員、みな命を賭けての活動である。ケータイによる家族との連絡すら絶ちつつ、あまりの凄惨さに自らの神経がおかしくなりかける遺体捜索など、これは戦争と紙一重だと思わざるをえない。「感動」などという言葉を使うのがはばかれるほどの迫力である。
④「がんと闘うな」で有名な著者は昨年、菊地寛賞を受賞し、この本もよく売れているらしい。近藤誠『医者に殺されない47の心得』(アスコム、1155円)は書名からして強烈だが内容も医者には極力かかるな、薬は飲むな、検診の数値指導など信じるな、などと激しい主張が続く。が、通読して同感するところも多く、病院と薬の大好きな人も多々参考にすべきだと感じた。中年以上は病気ではなくて老化現象だ、とにかく歩くのがいちばんの健康法だ、は至言だろう。(玄)