読書通信2017年8月号

■ 安倍内閣の支持率はつるべ落とし。政策とか理屈よりも、国会答弁の仕方とか、お友だち内閣の惨状とかに対する感覚感情的な批判が強い。こういう人気離反はかなり手ごわそうな気がする。そんな折、古賀茂明『日本中枢の凶謀』講談社、1836円)の熱気にはいささか辟易しながら圧倒された。テレビ中心にメディア関連の話が多いが、とりわけ「報道ステーション」をめぐる古舘伊知郎、官邸、テレ朝首脳の内幕話は自身が絡むだけに真に迫っている。
もとより政権批判はとどまるところを知らず、ここまで言うかと思う糾弾、そしてその根拠たる事実が次々に炸裂する。与党だけでなく、民進党批判も強烈で、白眉は原発マフィアの告発だ。読み進むにつれて、著者にはやはりテレビで批判相手たちと丁々発止の論争をしてもらうのが一番だという気になってくる。個々の論点すべてがそのとおりというつもりはないが、なるほどと思うことの多い告発の書である。
■ 個人的には、民主党政権でいちばんまっとうだったのは鳩山政権だったように思う。菅、野田政権には中道左派的な香りが感じられなかった。ただし、鳩山政権は対米自立姿勢がアメリカに疎まれ、外務省の警戒および背反もあって普天間で足をすくわれてしまった。
鳩山友紀夫『脱 大日本主義』平凡社新書、864円)にはなかなか良い主張が並んでいる。大日本主義の幻想、対米従属からの脱却、成長戦略から成熟戦略へ、などの構成は的確な現状認識と時代感覚で冴えているし、強い主張の割に表現は抑制が効いていて、自己弁護や自己顕示がない。このようなタイプの政治家は近年、非常に珍しいと思う。その主張には石橋湛山の小日本主義に通底するものが多々あるというだけで推薦するわけではないが、今、日本を考える上で大いに参考とすべき良書である。
■ 日本が連合軍に負けたのは、戦略戦術の稚拙さとともに石油と鉄が決定的に不足したためだった。山本一生『水を油に変える人』文藝春秋、1911円)は油欲しさにいかさま錬金術師の策謀に引っ掛かりかけた山本五十六、大西瀧治郎ら海軍中枢のドタバタ劇を描いた異色のノンフィクションである。水から石油が出来るはずがないとは今では誰でも思うだろうが、石油の一滴、血の一滴、などと言っていた時代にはもしやの期待がかかった。大いに楽しめる。
■ イナゴ(つまりバッタ)が今でも大量発生するモーリタニアに単身出かけたバッタ博士の孤軍奮闘の実録記。前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』光文社新書、993円)は文句なしに面白い。私生活でも研究でも悪戦苦闘の連続なのだが、ユーモアたっぷりの筆致とネアカな性格から少しも深刻でなく、むしろお笑い芸人本のようだ。でも挑戦とは、研究生活とは、人生とは、といろいろ考えさせられる。若い人にもぜひ読んでほしい。(浅野 純次)