読書通信 2018年1月号

■ 恒例により昨年1~12月号で紹介した47冊の中からベストテンを。ジャンルが偏らぬよう心掛けた点と面白さを優先した点をお断りしたい(順不同、数字は月号)。永野健二『バブル』①、瀬木比呂志『黒い巨塔 最高裁判所』①、吉田敏浩『日米合同委員会の研究』②、水島治郎『ポピュリズムとは何か』③、竹内早希子『奇跡の醤』③、植松三十里『雪積もりし朝』④、前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』⑧、孫崎亨『日米開戦へのスパイ』⑨、坂野潤治『帝国と立憲』⑩、奥野修司・徳山大樹『怖い中国食品・不気味なアメリカ食品』⑪。ほかに文学では門井慶喜『銀河鉄道の父』⑫、話題性では青木理『安倍三代』③も捨てがたい。
■ 加計事件は役人の忖度の問題にすぎずそろそろ幕引きか、という見方が増えているように感じる。しかし森功『悪だくみ』(文藝春秋、1728円)を読むと、これは根の深いスキャンダルだと思わざるをえない。掘り起こされていく事実に押され一気に読み終えた。安倍首相と加計理事長が「腹心の友」以上の友であるという圧倒的な証明に加え、下村博文・萩生田光一両氏と加計とのずぶずぶ感はすさまじい。さらに下村・加計・安倍各夫人たちの異常な親密さが事件と深くかかわっていることが明らかにされる点も重要だ。問題をうやむやにさせないためにも広く読まれるべき本と思う。
■ というわけで片田珠美『忖度社会ニッポン』(角川新書、864円)も読んでみた。著者は精神科医で、日本人はなぜこれほど忖度するのか、忖度しすぎるとどうなるのか、多くの実例を引いて分析している。忖度は官民あらゆる組織で、そして家庭でさえも日本人につきまとう「業」のようなものであるとして、空気を読みつつも流されないよう努力することを勧めている。
■ 中国の本当の姿は報道や旅行ではわからない。文庫化された余華『ほんとうの中国の話をしよう』(飯塚容訳、河出文庫、993円)は中国と中国人を知る貴重なエッセイ集で、作家ならではの観察眼とのびやかな語り口に圧倒される。特に文化大革命当時の描写は圧倒的迫力で歴史的現場へと運んでくれる。経済格差やコピー商品など経済大国へ突き進む現代中国への風刺も鋭く、登場するあまたの人物たちのエピソードがたまらなく可笑しい。中国では発禁だそうだが、中国の若者にも読ませたいものだ。
■ 地政学は国際関係だけでなく歴史にも有効である。兵頭二十八『日本史の謎は地政学で解ける』(祥伝社、1404円)は歴史ファンには格好の謎解き本で、せめぎあう西と東(西国と東国)、日本の成立(平家滅亡、薩長など)、日本外交の採るべき道(琉球、征韓論、満州など)と単に歴史をなぞっていないところがいい。特に海路が重視され、運河としての瀬戸内、荒れる日本海など日本史を規定した物流と兵站の話の数々は興味津々である。(浅野 純次)