読書通信 2019年2月号

■ 最近、政治家や官僚の発言がますます軽くいいかげんになっている気がする。国会では野党が、記者会見では記者が、即座には発言の信憑性を追及するだけの材料は持ちえないにしても、少なくともその場で発言内容について念を押し、後日「誤解を招いたとすればお詫びする」とか「記憶違いだった」などと逃げられないように逃げ道をふさいでおくべきだろう。
南彰・望月衣塑子『安倍政治100のファクトチェック』集英社新書、907円)は森友・加計問題、アベノミクス、安全保障、憲法・人権問題などで安倍首相、菅官房長官、佐川理財局長らがどう発言し、そこに虚偽がなかったか検証している。こうしたファクトチェックは極めて重要で、よくぞこれほど出任せが語られるものよと驚かされる。「記憶の限りでは」が乱発されているが、後で「記憶違いだった」ですむのではウソの言い放題ということになりかねない。欧米のように侮辱罪とか罰則規定の適用がもっと厳しくあってしかるべきではないか。
■ 森友学園問題で活躍した元NHK記者によるノンフィクションである相澤冬樹『安倍官邸VS.NHK』文藝春秋、1620円)はとてつもなく面白い。NHKはこの本に対し虚偽が多く放送にかかわる機密を勝手に公表したとして批判したが、その具体的内容についてはその後、明らかにしていないので、内容は99%真実であると断じてよいのだろう。
50代半ばにして「生涯一記者」にこだわる敏腕の著者は大阪地検に食い込み、籠池理事長の信頼も得てスクープを連発するが、官邸に忖度する局長や部長によって記事は改変され番組は放送中止になったりする。取材から出稿、放送までのスリリングな過程が放送メディアの内幕(これも面白い)とともに詳細に語られる。書名の「安倍官邸」はほとんど登場しないが、検察の向こうにじわじわっと浮かび上がる。
■ 官邸といえば、幕蓮『官邸ポリス』講談社、1728円)によると今の官邸を仕切るのは政治家でも経産官僚でもなくて警察官僚らしい。著者は元警察官僚で、元仲間たちがどう活躍(暗躍か?)しているかが、御用記者Y、文科省次官M、首相夫人などを題材に描かれる。首相周辺のスキャンダルを未然にもみ消すヒーローたるポリスに対し他官庁は散々にけなされる。どこまで信じていいのか首をひねりながら読んだが、官邸の内側をのぞいた気分にはなる。
■ 元気のいい高齢者はピンピンコロリを信じているけれど、と春日キスヨ『百まで生きる覚悟』光文社新書、885円)は多くの事例を調べていく。彼らは葬式と墓の準備はするが、ヨロヨロドタリとなって長期介護される予期せざる悲劇までは考えない。あまりに楽観的な多くの高齢者に、著者は身の振り方を今からしっかり考えておくように勧める。身じまいの作法を考えるに早すぎることはないと。(浅野 純次)