読書通信 2019年12月号

■ アマゾンの快進撃が止まらない。今に衣食住なんでもありの巨大小売店になるのだろう。横田増生『潜入ルポ アマゾン帝国』小学館、1870円)は、14年前の前著『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』以上に面白い。下請けの物流センター受託会社は時代錯誤的な階級社会で、上流階級(正社員)がアマゾンのことを「アマゾンさま」と連呼する様は異様としか言いようがない。合理化の極限を行く労働環境もさることながら、死亡事故に対するアマゾンの木で鼻をくくったような対応や、配送トラックに同乗しての体験記も興味津々だ。
アマゾンの特徴は徹底した秘密主義で、これだけ大きな社会的存在になったことへの自覚がまるでないのに驚く。独裁的経営者ジェフ・ベゾスの人物像や租税回避の仕組み、フェイクレビューの実態、最大の犠牲者たる書店との関係など、アマゾン帝国の一部始終を知る。その増殖に歯止めをかけなくていいのだろうかと思わざるをえない。本書を読んでなおアマゾンを利用し続ける人はどのくらいいるのだろう。
■ 政治の劣化は桜を見る会で極まれりの感がある。長期政権は功(政策遂行)がなければ罪(忖度と弛緩)ばかりが目だちかねない。星浩『永田町政治の興亡』朝日新聞出版、1650円)は竹下から安倍まで18人の首相の実績と政権の裏側が手際よく描かれている。首相のみならず官房長官や幹事長など要人がどう考えていたか、次の首相をめぐる思惑はどうだったか、実力者とベテラン政治記者との相対の会話によって内幕が明らかにされていくところが本書の魅力である。首相それぞれの成果や強み、失敗や弱みがバランスよく俎上に乗るのも好ましく、資料的価値も捨てがたい。
■ 嫌韓本を読む気にはならないが、韓国を冷静かつ批判的に描いた金敬哲『韓国 行き過ぎた資本主義』講談社現代新書、946円)は隣国の正確な理解に益するところ大である。「過酷な受験戦争と大峙洞キッズ」「厳しさ増す若者就職事情」「崖っぷちの中年世代」「引退できない老人たち」「分断深める韓国社会」という章立ての内容にはほんとに大変だなあと同情を禁じえなかった。余裕のない韓国の人々に対しては隣国として温かさも必要だろう。もっとも明日はわが身かと思わせられる示唆に富む書でもある。
■ 歳月を経て仲間が集まると必ず始まるのは健康談義である。米山公啓『長生きの方法 〇と×』ちくま新書、858円)によると、コレステロールは取らないほうがいいは×、コーヒーは体にいい〇、脳トレすれば認知症にならない×、だそうだ。60歳過ぎて血圧など数値にこだわるのはムダな一方、歩くのと立つのが大事で、好きなものを食べ、人と会い、変化を楽しむことが基本らしい。健康が気になる中高年に役立つヒントが詰まっている。「老後の生き方は思い込みだらけ」の章も面白い。(浅野 純次)