読書通信 2020年1月号

■ 昨年取り上げた47冊の中からベスト10を選んでみた(〇数字は月号)。日本の課題を突く書として橘玲『上級国民/下級国民』⑨、将棋面貴巳『日本国民のための愛国の教科書』⑩、宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』⑩、安倍政権の本質は官邸にありで森功『官邸官僚』⑦と相沢冬樹『安倍官邸NHK』②、ネット時代に立ち向かうためにジャロン・ロニアー『今すぐソーシャルメディアのアカウントを削除すべき10の理由』⑨と横田増生『潜入ルポ アマゾン帝国』⑫、隣国を知るために峯村健司『潜入中国』⑪と金敬哲『韓国 行き過ぎた資本主義』⑫、そして歴史に学ぶ中路啓太『昭和天皇の声』⑩。番外の中島京子『夢見る帝国図書館』⑧を含め、どれも期待を裏切らないはずである。
■ 人間よりAIのほうが知能の可能性ははるかに高く、今にAIが人間に命令を下す日が来ると思っている人は少なくないだろう。でもAIには決定的な欠陥がある。新井紀子『AIに負けない子どもを育てる』(東洋経済新報社、1760円)はまずそこから始まる。ビッグデータの解析によって文章を推測するだけだから、AIに情緒や理念や正義がわかるわけがない。数学的処理の結果としてだけのAIが本質的な意味で読解力を持つはずがないのである。
だが、だから心配はいらないとは著者は言っていない。むしろ生徒の読解力があまりにひどいのでAIに職業を奪われる可能性が大きいと本気で心配している。本書ではリーディングスキルテストが28問あるので大人も子どもも読解力のレベルがわかるし、どうしたら意味がわかって読めるようになるかが学べる。子や孫のため、そして社会人も一読の価値は大きい。
■ 同文同種といえば日中のことだ。しかし日中生活文化の違いは無数にあって中国人からみたら不思議の国、日本ということらしい。中島恵『中国人は見ている』日経プレミアシリーズ、935円)は日中の食い違いを追う書である。上司のはっきりしない指示、飲み会で豹変する上司や仲間の姿、メールのCCにまで序列をつけて送る社内風土、「言わなくてもわかる」主義で結局わからないビジネス社会、など中国人社員は戸惑うばかりだ。一方で中国の悪いところも次々と紹介される。時間の観念のルーズさ、公衆道徳の欠如、簡単に破られる面会の約束等々。日中間の深淵なギャップについての具体例が得られる気軽な一冊。学ぶことは多い。
■ 古書をテーマにしたミステリーというのは珍しい。門井慶喜『定価のない本』(東京創元社、1870円)は『銀河鉄道の父』で直木賞をとった著者にだけに大いに期待して読んだ。確かに展開に意外性があり、戦後の混乱期、日本の古典籍(江戸期までの和本)を扱う古書店主とGHQ少佐の対決は文化の本質に関わる。ために本書を激賞した文芸評論家もいたが、トリックと細部に少々疑問が残った。(浅野 純次)